平成26年度
海外現地研修

【目的】海外事業所における課題とその対策、現地の大学における教育の現状把握等
【実施期間】平成26年8月24日(日)〜30日(土)
【実施場所】タイ王国

行程


(左から)近村先生、近藤さん(学生)、山本さん(学生)、西原さん(社会人)、孫さん(社会人)

8月24日から30日まで、タイ王国バンコクほかでの現地研修を実施しました。
研修にはシグマ株式会社の西原さん、柿原工業株式会社の孫さんと近畿大学学生の山本さん、近藤さんが参加。近畿大学の近村先生が同行しました。

1日目(8/25)

JETROバンコク事務所での説明風景

海外に展開している日本企業のサポートを行っているJETROバンコク事務所をまず訪問し、ビジネスサポートセンターの岡部さんからタイの概況とアセアン経済についてお聞きするとともに、どこの国であれ歴史・文化があり、決して奢ることなくそれを尊重する大切さなど自らの海外駐在経験を交えた貴重なお話をいただきました。学生のバンコクに高層ビルが多くて驚いたがなぜかという質問にも、地震がないタイ国の良い点や問題点など丁寧に答えていただきました。

午後は、同じビルにある海外産業人材育成協会(HIDA)バンコク事務所と広島銀行バンコック駐在員事務所を訪問しました。HIDAでは、広島大学ご出身の井手さんから、産業人材育成を通じ、「共に生き、共に成長する」世界の実現を図るというミッションを実現するために実施されている技術研修(日本での研修生受入や海外への専門家派遣)や中小サービス産業等海外現地人材研修支援事業などについて熱心にご説明いただきました。また、広島銀行バンコック駐在員事務所の河尻(こうじり)所長からは、地方銀行が国際業務に強い人材の育成に力を入れていること、自らもタイのみならずタイ周辺国やタイ地場企業の動向など積極的に情報収集されている活動の一端を披露いただきました。そして、特に学生に向けて、企業訪問は相手の貴重な時間を割いてもらっているという意識をしっかり持って、自らの今後にきちんと活かしていくようにという叱咤激励をいただきました。

HIDAバンコク事務所での説明風景 JETROとHIDAのEVホールにて 広島銀行バンコック事務所での説明風景

2日目(8/26)

バンコクから車で約3時間のところにあるAuto Aliance Thailand Co.Ltd(AAT)を訪問しました。同社は、広島県に本社を置く自動車メーカー マツダ株式会社と米フォードとの折半出資による合弁会社で、乗用車10万台/年、タイで人気のピックアップトラックが14万台/年の生産能力を持つ、従業員7,000人ほどの企業です。当日は、AAT副社長の原田さんから工場概要の説明をいただき、参加者からの質問には、AAT副社長兼CFOの安本さん、原田さん、経営企画の弥永さんからも、マツダのブランド戦略から、AATから輸出する理由や地域貢献活動まで幅広く回答いただきました。お昼は近隣の工場のなかでもおいしいと評判のAAT内のカフェテリアで従業員の方と同じ食事も経験しました。その後、上級技術アドバイザーの神崎さんと藤井さんから、工場(車体・組立)をご案内いただき、最後に原田さん、神崎さん、藤井さんには生産ラインの自動化の考え方や現地の方とのコミュニケーションで気をつけておられることなど、熱心に参加者の質問にお答えいただきました。AATはこの地域に貢献する、日本と同じ技術を教えているなど、企業利益だけでなくタイとともに成長していこうとする姿勢に感銘を受けました。

AAT玄関にて会社の皆様と AATでの意見交換の風景 いざ工場見学に出発

3日目(8/27)

JICAバンコク事務所での説明風景

午前中はまずJICAバンコク事務所を訪問し、企画調査員の宮下さんからJICAのタイ政府支援状況について説明を受けました。参加者からは、HIDAとの役割の違いや円借款プロジェクトの受注先、気候変動対策、JICAは後進国支援と考えてきたがタイへの支援は今後どうなっていくのかなど多数の質問があり、相手国からの協力要請前提や有償円借款は国際入札となること、洪水対策、ASEAN内の格差是正のためタイによる広域技術協力へも支援していくことなど丁寧に答えていただきました。

続いて、タイで最も歴史のあるチュラロンコン大学の工学部に移動して、チーフコーディネーターの井上さんよりJICAの実施する日本政府の事業の一つとして、ASEAN加盟国のトップ工学系26大学と日本のトップ工学系14支援大学がネットワークを強化し、ASEAN域内産業の発展と国際化に貢献することを目指して実施しているSEED-Netプロジェクトの概要をお聞きしました。意見交換後は、チュラロンコン大学内の工学部食堂で学生に交じって学食メニューを体験し、その後に井上さんに由緒ある建物である記念講堂や図書館をご案内いただきました。

SEED-NET事務所での説明風景 チュラロンコン大学工学部食堂の昼食風景 SCGでの意見交換の風景

午後は、バンコク中心部にあるSCG100年記念ビルを訪問しました。同社は関連企業を含め社員が5万人を超える、建設資材・石油化学事業など多角的に展開するタイを代表する大手企業です。

広報人事部のポタナント部長と人材育成部のサティラクル部長から、SCGに入社することはもう一つの大学に入ることに匹敵するキャリアアップコースが用意されており、そのための必要な支援と資金が用意されているとの説明をいただきました。参加者からは育成人材の定着策、人事評価の公正性担保やタイと日本の企業文化の違いなどの質問があり、キャリア形成と処遇の情報を本人に開示することや風通しのよい社風、企業文化ではタイはトップダウンだが日本はボトムアップである、海外拠点の管理者を育成するプロジェクトを日本の大学と実施していることなどの紹介がありました。最後にSCGからタイは安全であり心配がないことを帰国したら伝えてほしいとの依頼も受けました。

4日目(8/28)

バンコクから車で約50分のところにある株式会社サタケの現地子会社SATAKE Thailand Co.Ltd. を訪問しました。ASEAN諸国をはじめ世界の国々の精米工場にはサタケ製の精米機が多く設置されています。当日は、社長の田中さんや副社長の松本さんから会社概要の説明を受けた後、技術責任者の山本さんに工場をご案内いただきました。CCDカメラとNIR(近赤外)カメラにより様々な異物を検知し、それをエアー噴射によって除去する光選別機も拝見しました。日本の技術が世界の消費者の安全・安心と生産者の付加価値化の両方に貢献していることに改めて感心しました。また、参加者からは育児休暇があるのかどうかや労務管理の問題などの質問があり、田中社長から女性が働ける労働環境をつくることに力をいれていることや進出した国の文化を尊敬し習慣を理解しないと成功しないこと、うまくいかない理由の一つに情報をきちんと伝えていないことがあるのではないか、財務関係のことまで質問に幅広くお答えいただきました。3年前の洪水被害から復旧していない近隣工場がまだあることに驚きましたが、同社は一早く操業を開始され現在は被害の跡も見受けられませんが、当時は写真にあるサタケの玄関エンブレムまで水没してしまったそうです。

サタケ タイランド玄関にて会社の皆様と 会議室で記念撮影

5日目(8/29)

最終日は、午前中はロストワックス(精密鋳造)とメタルインジェクション(MIM)で金属部品を製造されている株式会社キャステム(広島県福山市)の現地企業の一つであるキャステムタイランドを訪問しました。キャステムタイランドは設立12年目ということですが、設立当初からご苦労されている工場長の藤原さんから概要説明後、工場内を案内していただきました。意見交換では、現地人材の採用やマネージメントの話題になり、同社は採用にあたり日本式経営を行うことを最初にきちんと伝え、多能工化を図るための人事ローテーションなどタイの人になじみの薄いシステムを受け入れてもらう一方、安心・清潔で公平な職場環境づくりに努めており、信賞必罰をしっかり行っていることをお聞きしました。現在はこうした社員教育が奏功して、タイ人女性がマネージメントの重責を担うまでになっているとのことです。また、これも日本式といえますが藤原さんがまず自ら実践し、教えてからタイ人にさせてみることで、タイ人も納得して指示に従うようになったそうです。一口に日本企業の海外展開と言っても、企業ごとに様々な試行錯誤やノウハウがあり、今日に至っていると考える貴重な機会となりました。

キャステムタイランドでの説明風景 工場入口にて記念撮影

午後からは、タイで最も歴史のある水曜日に訪問したチュラーロンコーン大学に次ぐ歴史を有する国立大学であるタマサート大学ランシット・キャンパスを訪問しました。当日は、まず、建築学科の都市環境開発研究室を訪問し、Tantasavasdi先生とDenpaiboon先生から都市デザインなど研究内容の紹介を受けました。タマサート大学のデザインプランもこの研究室が担当しているそうです。その後は、DEN先生のお世話により場所を学生ラウンジに移し、参加者とタマサート大学学生がお互いの学生生活などの懇談を行いました。タマサート大学の周りはアルバイト先があまりないことも影響しているようですが、タイ人学生は日本人学生のアルバイト事情を聞いて、なぜ奨学金を利用しないのか、勉強はどうしているのかなど驚きの声が上がっていました。続いて、学生の案内で図書館や隣接した研究施設の見学を行いました。海外の大学の雰囲気に触れる機会を得て、参加者した本学学生にとって特に刺激的な経験になったと考えられます。DEN先生ほかタマサート大学の学生の皆さんのご協力に大変感謝する次第です。

タマサート大学 都市環境開発研究室にて タマサート大学 学生との交流 お世話になった皆さんと記念撮影